子供の安全ネットワーク・ジャパン副代表 山中龍宏
19熱中症 乳幼児を自動車の中に放置するな

 人の体温は、外観の温度が変化しても一定の値に保たれるように調節されています。この調節を行っているのは脳の視床下部にある体温中枢というところです。
 高温、多湿の環境下で激しい運動をした場合など、この調節機能が働かなくなると、体の中で生じた熱を体外に放散することができず、体温が以上に上昇します。このような異常な体温の上昇と脱水の合併した状態を熱中症といいます。熱中症の「中」は「中(あた)る」という意味で、毒に中る、すなわち「中毒」と同じ使われ方の言葉です。

1995年7月24日から8月31日までの東京消防庁環軸下の熱中症患者数(救急車で病院へ搬送された患者のみの数。その場での応急処置だけの者は除外)
年齢
患者数
0〜9歳
3人
10〜19歳
56人
20〜29歳
79人
30〜39歳
41人
40〜49歳
59人
50〜59歳
59人
60〜69歳
56人
70〜79歳
56人
80〜89歳
49人
90歳
11人

469人
 熱中症は一般に、(1) 熱けいれん(筋肉のこむら返りを伴う軽症型)(2) 熱疲労(中等症型)(3) 熱射病(重症型)―の3つに分類されています。

 熱中症の実態は?
 厚生省の疫病統計によると、1978年、83年、84年、90年、94年には、熱中症による死亡数が年間に100件を越えています。少し古い資料ですが、日本体育・学校健康センターによると81年から90年の10年間に68人(年平均約7人)の小・中・高生がスポーツによる熱中症のために死亡しています。また、熱中症のために医療機関を受診した生徒の数は、88年の1年間に、小学生17人、中学生157人、高校生179人の合計353人出した。すなわち、死亡数の70倍以上の小児が医療機関を受診しており、受診しなかった熱中症はさらに多く発生しているはずです。
 95年の夏の40日間に東京都では470人が熱中症のために医療機関に運ばれました(表)。

 乳幼児の熱中症
 乳幼児では、自動車の中に放置され熱中症のために死亡することがあります。新聞記事からみてみましょう。

 【事例】7カ月の男児
 5月中旬の午後2時すぎ、パチンコ店の駐車場の乗用車内でぐったりしているのを母親が見つけ、近くの病院に運んだが死亡した。母親は当日午前11時頃、手提げ用ベビーかごに乳児を入れ、通風のため左右の窓ガラスを2センチほど開けて乗用車の後部座席に置いてパチンコをしていた。駐車場に屋根はなく、当日の午後2時頃の気温は22・5度であった。
 これと同じ事故がわが国では毎年発生しています。数年前、ロサンゼルスのショッピング街の駐車場の乗用車の中に乳児を一人で置いて買い物にでかけた若い夫婦が逮捕された事件がありました。アメリカでは、保護が必要な乳児を放置すると親の責任を放棄したとして逮捕されるのです。
 乳幼児は、比較的短時間の暑い環境下で熱中症になる可能性が高く、放置はたいへん危険です。日本でも、社会が子どもを守るような法体制をとるべきと思います。パチンコ店の駐車場に「子どもを車内に放置しないで」という看板を立てるより、工学的な防止策として、車内温度が35度になったら大きな警報音が出るものを作り、車内に設置するほうが有効と思います。

 スポーツによる熱中症の予防は?
 (財)日本体育協会発行の「熱中症ガイドブック」には、熱中症予防8カ条が示されていま
す。
 (1) 知って防ごう熱中症 (2) 暑いとき、無理な運動は事故のもと (3) 急な暑さは要注意 (4) 失った水と塩分取り戻そう (5) 体重で知ろう健康と汗の量 (6) スケスケルックでさわやかに (7) 体調不良は事故のもと (8) あわてるな、されど急ごう救急処置―となっています。
 スポーツも「精神力で頑張る」のではなく、科学的にそして安全を確保しながら行うことが必要なのです。


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